ヴォルビリスの考古遺跡は、メクネスから北に約30kmの場所に位置するローマ時代の都市遺跡です。西暦40年頃にローマ帝国の属州都市として建設され、肥沃な土地を生かしたオリーブや小麦などの生産で3世紀末頃まで繁栄しました。現在でもヴォルビリスには、神殿やバシリカ、公衆浴場、凱旋門、モザイク画、穀物倉庫など古代ローマ都市の遺跡が良好な状態で残っています。1997年にはユネスコの世界遺産に登録され、現在も発掘調査が続けられています。
営業時間:(5月-8月)8:30-19:30(9月)8:30-19:00(10月)8:30-18:30
(11月・2月)8:30-17:30(12月-1月)8:30-17:00(3月)8:30-18:00(4月)8:30-19:15
料金:(大人)70MAD(子供)30MAD
参考サイト:volubilis.ma
(2019年12月現在)
ヴォルビリスにローマ帝国の属州の都市が築かれたのは、マウレタニアの王プトレマイオスがローマ皇帝カリグラに暗殺された後の西暦40年頃のこと。この地には、紀元前3世紀頃からカルタゴの影響を受けた町があり、その上にヴォルビリスが築かれたものと考えられています。ヴォルビリスは、オリーブや小麦などの生産で繁栄し、最盛期には最大で2万人以上の人々が暮らしていました。3世紀末にローマ帝国が縮小し、北アフリカの大半から撤退するとヴォルビリスも衰退し始めました。7世紀に入り、マグレブ(北西アフリカ)全域がイスラム化され、789年にイドリース朝の創始者イドリース1世がアッバース朝の迫害から逃れてこの地に移住しました。しかし、その後すぐにイドリース朝の首都がフェズに定められ、ヴォルビリスは次第に衰退し、いつしか歴史から忘れ去られてしまうこととなりました。
1755年のリスボン大震災で被害を受け、さらに同時期のアラウィー朝のスルタン、ムーレイ・イスマイルの治世下では、首都メクネスの町の建築資材としてヴォルビリスの遺跡から大理石の一部が持ち出されました。19世紀後半になりこの地がヴォルビリスの古代都市と特定され、20世紀に入り、フランスの調査団により遺跡の本格的な発掘調査が開始されました。この発掘調査では、広範囲からローマ時代の都市遺跡が出土し、凱旋門、キャピトル神殿、バシリカ、タンジェ門などの公共の建造物や邸宅の一部の修復が行われました。その後の発掘調査では、ローマ時代以前、初期キリスト教時代、イスラム時代など異なる時代の遺跡が発見され、この地の歴史を知る重要な手がかりとなりました。
ヴォルビリスの考古遺跡は、広大な畑に囲まれた丘の上にあります。約40ヘクタールに及ぶこの町は、ローマ時代には全長2.3km以上にも及ぶ市壁で囲まれていました。
入口から入ってすぐの遺跡の南側エリアは、住宅街だった場所です。このエリアで見どころとなっているのが、オルフェウスの家。オルフェウスの家の中庭には、竪琴の名手オルフェウスが演奏すると森の動物が集まってきてその音色に耳を傾けている様子が描かれたモザイク画が残っています。因みにヴォルビリス遺跡で名前が付けられている邸宅は床に描かれているモザイク画の題材に由来しています。オルフェウスの家の隣にはヴォルビリスの公衆浴場の中で最も豪華なガリエヌス帝の浴場があり、魚やタコなど海の生物が描かれたモザイク画を見ることができるほか、温水を供給していた水道設備の遺構も見られます。また、オリーブオイルの製作所の遺跡には、古代のオリーブの圧搾機が展示されています。
南部の住宅街の先は、ヴォルビリスの中心地となる中央広場(フォーラム)があります。この広場の周辺は、司法や行政、商業の中心となっていた場所です。ここには、2つの主要な公共建築物であるバシリカとキャピトル神殿があり、ヴォルビリス遺跡で最も象徴的な場所となっています。バシリカは、裁判所や元老院が置かれていたところで、現在も残る外壁の一部からかつての建物の姿を連想することができます。バシリカの背後にあるコリント式の柱が並ぶキャピトル神殿は、ローマの三神であるユピテル、ユーノー、ミネルヴァが祀られていました。ヴォルビリスの市民生活において最も重要だった場所で、神殿の前では神に祈りや感謝を捧げる市民集会が開かれていたとされています。広場にあるパン屋の遺跡には小麦を挽く石臼が残っています。
中央広場の北側にある立派な門は、カラカラ帝の凱旋門です。212年にカラカラ帝は、アントニウス勅令を発し、全属州民へローマ市民権を付与し、さらに属州民税を廃止しました。これにより財政が向上したヴォルビリスは、カラカラ帝とその母ユリア・ドムナに感謝の意を表して、217年にカラカラ帝の凱旋門を建造しました。凱旋門が完成する前にカラカラ帝も母ユリアも殺害されたため、彼らがこの凱旋門を見ることはありませんでした。カラカラ帝の凱旋門は、20世紀前半に一部修復が行われ、アーチの横にはカラカラ帝の像が見られます。また、門の上部には、カラカラ帝と母ユリアに感謝の意を捧げた碑文が復元されています。
カラカラ帝の凱旋門から東に一直線に伸びるデクマヌス・マクシムス通りは、ヴォルビリスのメインストリートで、東端のタンジェ門まで続いています。デクマヌス・マクシムス通りの両側は、比較的大きな建物が立ち並ぶ住宅街でした。ほとんどの住宅は中庭とその周りに回廊が配置された豪華な邸宅で、良好な状態で保存されているモザイク画が大きな見どころとなっており、ぜひじっくり見学したいところです。モザイク画は、動物や海洋生物から神話に基づいた場面など多様性があります。
ヘラクレスの功業の家は、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスが乗り越えてきた12の功業が描かれたモザイク画からその名がつけられました。ヘラクレスの功業の家の隣のディオニュソスと四季の家に残るディオニュソス(ワインの神)と四季を代表する女神が描かれたモザイク画も見事です。この他にもニンフの入浴や馬術師などを描いた興味深いモザイク画がたくさん見られます。
ツアー・アクティビティ名 | 所要時間 | 詳細 |
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イスラム建築の最高傑作 古都メクネスと世界遺産ヴォルビリス遺跡<1泊2日/英語ドライバー/カサブランカ発・フェズ着> | 2日 |
モロッコには四季がありますが、沿岸部、山間部、砂漠と変化にとんだ地形で、地域毎に気候が異なります。メクネスは、1年を通して観光を楽しめますが、ベストシーズンは、最も過ごしやすい春(4月~5月)と秋(10月)です。夏季は乾燥し、気温も高く、こまめな水分補給が必要です。冬は、実際の気温よりも体感温度は寒く感じるので、防寒対策が必要です。
天気予取得中... |
【フェズ=サイス空港からフェズ市内】
<タクシー>
所要時間:約30分
目安料金:120MAD
<路線バス>
空港の外のバス停から16番バスがフェズ駅(新市街)まで運行
所要時間:約40分
料金:4MAD
【フェズからメクネス】
<電車>
フェズ駅からメクネス方面行きの電車に乗車
所要時間:約30分
※メクネスからヴォルビリスまでタクシーで約40分。もしくはメクネスから乗合いのグランタクシーでムーレイ・イドリスまで行き、そこからさらに乗合いタクシーに乗り換えて行くことも可。
(2019年11月現在)