チュニジア北西部の内陸の盆地に位置するブラレジアは、ローマの植民都市となる前はヌミディア王国の都がありました。ブラレジアはチュニジアにある他の都市遺跡とは異なり、地上だけでなく地下にも住居が建設されていた珍しい遺跡です。大地震により地上の建造物はほとんどが倒壊してしまいましたが、破壊を免れた地下住居の床には保存状態のよいカラフルで秀逸なモザイクが多く残っており、大きな見どころとなっています。
ブラレジアは、カルタゴ時代の紀元前4世紀頃に建設された町で、当時はブラと呼ばれていましたが、紀元前156年にヌミディア王国の首都となった際にブラレジア(レジアは王家というの意味)と呼ばれるようになりました。ヌミディア王国は、現在のアルジェリア北東部からチュニジア北西部にかけて紀元前3世紀末から紀元前1世紀にかけて存在したベルベル系民族の国家です。元々はカルタゴと同盟を結び、第2次ポエニ戦争ではハンニバルの遠征軍に騎兵を提供し勝利に導いたものの、その後、ローマと協力関係を築き、カルタゴを侵略、滅亡に追い込みました。しかし、紀元前1世紀にヌミディア王国はローマに滅ぼされ、以降はローマの属州となりました。ローマ時代にブラレジアは、小麦の生産で繁栄し、2~3世紀にかけて最盛期を迎え、ブラレジアに残る建造物のほとんどはその時代に建てられたものです。ビザンチン帝国時代になると徐々にその重要性は失われ、大地震により町は崩壊してしまいました。廃墟となったブラレジアは厚い砂の層に覆われ、いつしか人々からも忘れ去られてしまいましたが、20世紀に入り本格的な発掘調査が行われ、再び注目を集めるようになりました。
ブラレジアの地上にある建物は、地震により倒壊したため原型を留めている建物はほとんど残っていなません。入口を入ってすぐの場所に見える大きなアーチ型の構造が残る建造物は、ユリア・メムニアの公衆浴場です。この浴場は、2世紀に建設されたもので、時の皇帝セプティミウス・セウェルスの妻ユリアの名前に因み名付けられました。ユリア・メムニアの公衆浴場は、ブラレジアの地上に残る遺跡としては最も大きな建造物で、、ブラレジアのランドマーク的存在となっています。壁やアーチを支える柱など建物の構造に加え、ところどころの床には、カラフルなモザイクが残っている部分もあり、かつての華やかな時代の壮麗な姿が偲ばれます。また公衆浴場の隣には、貯水槽や水道設備などの遺構も見られます。
ユリア・メムニアのテルマエから北に行くと高級住宅街が広がっており、地上には建物の基礎部分が残るのみですが、地下には、多くの部屋が残っています。ブラレジアの都市構造は、寒暖差の激しいこの地域の気候に適応するために地下に立派な居住空間が建設されていたことが大きな特徴です。地下には、柱廊に囲まれた明かりとりの中庭があり、壁の内部には水道管を通した天然の冷却システムを備えていました。古代のブラレジアの人々は、暑い夏には、この涼しい地下住居で過ごし、冬は暖かい地上の住居に暮らしていたのです。
地下住居は、柵が設けられ地上から覗き込めるようなっていたり、実際に地下に降りて部屋の内部を見学ができる住居もあります。地下に降りてみると、地上に比べてひんやりとしているのもわかります。また、柱や壁の一部の残る彫刻装飾や中庭に噴水の遺構などからも当時の裕福な暮らしぶりが垣間見られます。
芸術性が高く保存状態のよいモザイクのほとんどは、保存や保護のために博物館などへ移設されているものが多い中、ブラレジアの遺跡内にはローマ時代からビザンチン時代にかけての美しいモザイクが多く残されているのが大きな特徴です。特に地下住居に残るカラフルで秀逸なモザイクは、ブラレジア遺跡の観光のハイライトとなっています。モザイクは、幾何学模様や植物模様をモチーフにしたものがほとんどですが、中には人物や動物が描かれた芸術性の高いモザイクも残っています。「アンフィトリテの家」の地下ホールに残るアフロディーテとトリトンを描いたモザイクは、規模も大きく、保存状態も良好で、ブラレジアの数あるモザイクの中でも傑作です。その下にはイルカに乗る天使や魚の躍動的な姿が描かれています。アフロディーテとトリトンのモザイクの隣にも植物模様や幾何学模様をモチーフにしたモザイクや肖像画のようなモザイクが良好な状態で保存されています。
「狩猟の家」には、モザイク張りの豪華なダイニングルームがあり、上階にはローマ時代の水洗トイレが残っています。さらにその隣の「新しい狩猟の家」の地上の床には、動物や魚、狩りの様子などが生き生きと描かれたモザイクが残っています。この他にもビザンチン時代の金貨が大量に発見された「宝物の家」のダイニングルームの幾何学模様のモザイクや「漁師の家」の釣りの様子が描かれたモザイクなど美しいモザイクをたくさん鑑賞することができます。
チュニジア北部は、夏は乾燥して暑く、冬は雨が多く比較的温暖な気候です。観光は1年を通して楽しめますが、爽やかな気候の春から初夏にかけての4月~6月がオススメです。真夏は日差しが強く、日射病に注意が必要です。日向を歩く場合はこまめな水分補給や休憩とサングでラスや帽子、日焼け止めは必須です。冬は雨具の用意があると安心です。
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【チュニス・カルタゴ国際空港からチュニス市内】
<タクシー>
所要時間:(市内中心部)10~20分
目安料金:5TND前後
<路線バス>
大通り沿いのバス停から35番又は635番に乗車。終点チュニス・マリン駅まで運行
所要時間:20~30分
料金:0.500TND
【チュニスからのアクセス】
チュニス北バスターミナルからジェンドゥーバ(Jendouba)行きのバスに乗車(約3時間)→ジェンドゥーバからタクシーまたはルアージュでブラレジアまで約15分
所要時間:約3.5時間
参考サイト:sntri.com.tn