クリスチャンスフェルドは、ユトランド半島南部に位置する町で、モラヴィア教会(モラヴィア兄弟団)の入植地の一つです。黄色のレンガ造りの壁面ににオレンジ色の屋根で統一された建物は、装飾がなく、平和と調和を重んじる平等な共同体の啓蒙思想が反映されています。この独特な雰囲気が漂うクリスチャンスフェルドの街は、ヨーロッパのモラヴィア教会の共同体の中で最もよく保存された好例として2015年に世界遺産に登録されました。
クリスチャンスフェルドは、1773年にモラヴィア教会の入植により、緻密な都市計画に基づいて建設された町で、町の建設を命じた時のデンマーク王クリスチャン7世とドイツ語で場所を意味するフェルド(feld)を組み合わせて命名されました。ドイツのヘルンフートからやって来たモラヴィア人たちは、熟練の職人や商人で、何もなかった土地に一からクリスチャンスフェルドの町を築き上げました。
1970年から2007年までは、クリスチャンスフェルド市の市庁舎が置かれていましたが、2007年の市町村合併でコリング市に編入されました。人口3000人ほどの小さな田舎町で、石畳の通りに面して建つ1階建てもしくは2階建ての建物は、黄色のレンガの外壁にオレンジ色の屋根で統一されており、全体的に調和の取れた美しい街並みを形成しています。クリスチャンスフェルドの旧市街に残るモラビア教会やホール、学校、家屋などの建築物は、現在も現役で使用されています。
簡素でありながら調和の取れた街並みは、啓蒙活動にも繋がる平和と平等な共同体のモラヴィア教会の理念に基づいて都市設計が行われていること、そしてそれがヨーロッパで最も美しい状態で保存されていることが評価され、2015年に「モラヴィア教会の入植地クリスチャンスフェルド」として町全体が世界遺産に登録されました。
モラヴィア教会は、世界最古のプロテスタントの宗派の一つであり、1457年にフス派の兄弟団としてボヘミアで設立されました。その名は、1722年に宗教迫害によりモラヴィア(現在のチェコの東部)からザクセン(現在のドイツ東部)に逃れてきた亡命者に由来しています。モラヴィア教会は、一時は反宗教改革や30年戦争により衰退していましたが、ザクセンにヘルンフートという町を形成し、1737年にツィンツェンドルフ伯爵が監督となり、再興しました。18世紀から19世紀には、アメリカをはじめ各地に宣教師が派遣され、広範囲で宣教活動や共同体の建設が行われました。
クリスチャンスフェルドでは、町の建設後、彼らは様々なビジネスや貿易拠点を設立しました。町には工場やショップが建設され、彼らの優れた職人技術や商才は当時一目を置かれてました。
クリスチャンスフェルドの都市計画には、プロテスタントの理念が根底にあり、教会広場を町の中心に据えて、その周りに主要な建物が建てられました。教会は、人々にとって大切な心の拠りどころとなる重要な場所。1776年に建てられたモラヴィア教会は、装飾などのないシンプルな建物で一見すると市民会館のような雰囲気です。教会内部も無駄を一切省いた白を基調としたスッキリとしたインテリア。祭壇部分には、モラヴィア教会の紋章が刺繍された緑の布がかけられたテーブルが置かれています。メインホールには柱がなく、これは柱のない教会ホールとしてはデンマークで最大規模と言われています。かつては2000人を収容していましたが、防火や安全性の理由から現在は1000人程度に限定されています。
クリスチャンスフェルドのモラヴィア人は、性別や結婚の有無でグループが分けられていました。教会の周りには、未亡人の家、兄弟(独身男性)の家、姉妹(独身女性)の家があり、それらの家では、彼らが自立して生計を立てられるように様々なワークショップや教育が受けられるようになっていました。モラヴィア教会では、この時代にすでに高度な社会福祉のシステムを確立していたことがわかります。現在これらの建物は、アパートやホステル、博物館、ショップなどとして使用されています。
クリスチャンスフェルドの街並みは、ヨーロッパの地方の田舎町といった印象ですが、町を散策しながら、モラヴィア教会の歴史を辿ることができ、訪れる旅行者を惹き付けています。
コンゲンス通り沿いに建つモラヴィア・ホテルの壁には、ここで開かれた重要なイベントの歴史が刻まれた石版が掲げられています。ホテルの裏手にある広場は、マーケットやイベント・スペースとなっており、イベント開催時は多くの人々で賑わいます。広場にはオープンカフェもあり、天気がよければ休憩にもおすすめのスポットです。
また、平等の理念は整然と墓石が並ぶ墓地にも反映されており、地位や富に関わらず、皆同じ形状の墓石が使用されています。墓地には、19世紀に起きたコリングの戦いで戦死した兵士の墓や第1次世界大戦で命を落とした兵士たちの記念碑が建てられています。
クリスチャンスフェルドは、伝統的なレシピで作られるハニーケーキが名物。ハニーケーキはクリスチャンスフェルドのほとんどのカフェで提供されているので、訪れた際は、ぜひカフェに立ち寄って味わってみてくださいね。
クリスチャンスフェルドの旧市街は、コンパクトにまとまっているので、1時間もあれば、見て回ることができます。ただ、町の背景や歴史を知らないと見どころが少なく感じられるかもしれません。クリスチャンスフェルドについてより深く知るならガイドツアーに参加してみるのもオススメ。夏季は毎日、その他の季節は週末に約1.5時間のウィーキングツアーが開催されています。ツアーは、クリスチャンスフェルド・センターからスタートし、町を歩きながら、クリスチャンスフェルドの建築物や歴史、モラヴィア教会についての興味深い話を聞くことができます。
デンマークは、四季がはっきりとしていて、観光のベストシーズンは、最も過ごしやすい夏の6月~8月です。緯度が高いため夏季は日照時間が長く、観光に十分時間を取ることができます。沿岸を流れる暖流の影響で高緯度の割には温暖ですが、冬は日照時間が短くなり、厳しい寒さとなるので防寒対策は万全に。
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【コペンハーゲン空港から市内】
<電車(DSB)>
所要時間:(コペンハーゲン中央駅)約15分
料金:36DKK
参考サイト:dsb.dk
<地下鉄>
M2が空港から市内まで運行
所要時間:約15分
料金:36DKK
参考サイト:m.dk
<バス>
5Aが空港からコペンハーゲン市内中心部まで運行
所要時間:約30分
料金:36DKK
<タクシー>
メーター制
所要時間:(市内中心部)20~30分
目安料金:250~300DKK
【コペンハーゲン市内からのアクセス】
コペンハーゲン中央駅前のバス停からクリスチャンスフェルド行きのバス(flixbus)に乗車
所要時間:約3時間
参考サイト:flixbus.com
(2018年11月現在)