カオ・プラ・ウィハーン国立公園は、タイの東北地方イサーンの2県、3郡にまたがる広大な国立公園です。敷地内のほとんどは手つかずの自然で、この地に暮らす生き物たちや近隣の川の水源を国が保護しています。最大の特徴は、公園全体が約500メートルの断崖絶壁の上に位置しているというところ。また、クメール時代以前のものと思われる貴重なレリーフも園内にあり、大きな見どころとなっています。
営業時間:5:30-16:30
国立公園入場料:(大人)400THB(子供)200THB
カオ・プラ・ウィハーン国立公園は、シーサケート県とウボンラーチャターニー県の3郡にまたがり、公園の南はカンボジアとの国境がある約130平方kmの面積を持つタイの国立公園です。1998年に国立公園に指定されたカオ・プラ・ウィハーン国立公園の広大な敷地のほとんどは豊かな森林で、多様な生態系や近隣を流れる多くの川の水源を有しているため、保護のために域内への無断進入、居住は厳禁とされていますが、イサーン地方のありのままの自然の姿を肌で感じられる貴重なスポットとなっています。ドンラック山地の一部であるこの公園は、おおよそ海抜200メートルから500メートルの高地にあるため、すばらしい眺望を楽しめるのが魅力。モーイーデーン岩壁展望台、チョーンポーイ岩壁展望台、プー・シアンモー展望台など、公園内には展望台が点在しています。カオ・プラ・ウィハーン国立公園は、カンターララックのバスターミナルから30kmほど。カンターララックから公共のアクセスはないので、車やソンテウをチャーターして向かいましょう。国立公園の森林管理事務所があるのは、国道221号線の89km地点。ここは国道221号線の終点でもあるので、ここに設置されている国道のキロポストも、旅の思い出になりそうです。
カオ・プラ・ウィハーン国立公園の大きな見どころは、パー・モーイーデーン(モーイーデーン岩壁)です。この公園では、断崖絶壁の崖に沿って遊歩道が造られているのですが、この遊歩道は崖の下にも続いていて、長い階段を下りた先には岩壁に刻まれた仏像があるのです。このレリーフは1987年に、国境警備の途中のタイ軍によって発見されました。制作年代は10世紀頃と推定されていて、レリーフは部分的に風化が進んでいるため、ゲートと柵で保護されています。ちなみにこの遊歩道を道に沿って奥に進んでいくと、ここにある望遠鏡を使ってプラーサート・プラウィハーン遺跡を見ることもできます。この他、公園内にある、パー・チョーンポーイ滝やプーラオーの滝などの、ダイナミックな滝も見どころの一つ。9月から2月までは水量も多くなって迫力があります。また、トラーウ貯水池の西に位置している三段の滝の下にある、人が生活できるほどの広さを持つクン・シー洞窟の見学もおすすめ。プラーサート・プラウィハーン遺跡の建設のためにトラーウ貯水池の石切場を監督していたクン・シーが住んでいたという伝承が残されています。公園内の観光スポットの一つであるツイン・ストゥーパは、赤色砂岩で作られた2基の構築物。高さ4メートルほどの双子の塔の精巧に切り出された石の断面にうっとりします。帽子のようにも見えるユニークな形の上部は「蓮花芽」型と呼ばれています。
カオ・プラ・ウィハーン国立公園でもう一つ有名なのが、プラーサート・プラウィハーン遺跡です。天空の遺跡とも謳われるこの遺跡は、タイ・カンボジア国境の断崖上に建ち、大宮殿と塔、4つの楼門で構成されていて、北から南へと一直線に伸びる長さ900メートルの参道の上に配置されています。遺跡の一番奥にある中央祠堂付近の絶壁は高さ650メートルに達し、ここからは眼下に広がるカンボジア平原と、東にラオスの山並みを望むことができます。
9世紀末に建立されたとされるプラーサート・プラウィハーン遺跡は、遺跡内に刻まれた古文から、当初はSri Sikharisvara(栄光なる山の支配者)と呼ばれるシバ神を祀るヒンドゥー教寺院であったとされていて、クメール朝時代の11世紀に入ってから増築されたと考えられています。そんな美しい「天空の遺跡」ですが、実はこの遺跡は、タイとカンボジアの領土争いの舞台になったことでも知られています。長い歴史の中でカンボジアがフランス領になり、独立をする経緯の中で、プラーサート・プラウィハーン遺跡がどちらの国に属するのかがうやむやになってしまったことが争いの発端。1958年に両国で行われた領土問題解決のための会議は決裂し、なんと国交断絶してしまいます。1959年、カンボジアが国際司法裁判所に提訴し、1962年に下された判決で、プラーサート・プラウィハーンの領有権はカンボジアにあるとされました。その後2008年にプラーサート・プラウィハーンが世界遺産に登録されると、タイ国内の政治団体や市民団体が激しく反発。両国ともが軍隊を送り込み、2011年には、二国が武力衝突し、死傷者が出る最悪の事態となりました。これを受け、国際司法裁判所は、プラーサート・プラウィハーンとその周辺を暫定非武装地帯に設定し、両国の軍隊の撤退を命令します。2013年11月に、カンボジアの提訴を受けた国際司法裁判所が寺院周辺の土地もカンボジアに帰属すると言い渡し、ようやく長年の領土問題に決着がついたのだそう。つい近年までこうした紛争が続いていたのだから驚きですね。かつてはタイからもアクセスできたプラーサート・プラウィハーン遺跡ですが、現在は封鎖されています。国立公園の駐車場横にある小さな博物館では、遺跡に関する展示物を見学することができます。ちなみに、この寺院はカンボジア語ではプレアヴィヒアと呼ばれています。
11月から2月頃まで乾季、3月から5月頃までが暑季、6月から10月頃までが雨季と3つの季節にわかれています。乾季のシーズンは一年のうち一番天候が安定して過ごしやすく、観光にも適しています。暑季は、一年のうち最も気温が高くなり過酷な暑さとなります。こまめな水分補給を心がけましょう。雨季は雨の多い日が続きますますが、雨の影響で気温が下がり、朝晩は比較的過ごしやすくなります。
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