タンザニア南部のサファリサーキットに位置するセルース猟獣保護区は、敷地面積が50,000平方km以上にも及び、動物の保護区としてはアフリカ最大規模の面積を誇ります。手付かずの生態系が多く残り、さらに野生動物の多様さが評価され、1982年にユネスコの世界遺産に登録されました。広大な保護区内には、数万頭以上のゾウやバッファロー、ヌー、キリン、シマウマ、インパラなどが生息している他、クロサイやリカオン、セーブルアンテロープなどの希少種の重要な生息地にもなっています。
セルース猟獣保護区の敷地面積は50,000平方km以上にも及び、これはタンザニアのサファリのメッカであるセレンゲティ国立公園の約3倍、タンザニアの国土の5%以上にもなります。保護区内は、人間の定住は認められておらず、その大部分が前人未到の手付かずの生態系が残る野生動物の楽園となっています。このエリアが保護区となったのは、タンザニアがドイツ領時代だった1905年にまで遡ります。当時のドイツ皇帝ヴィルヘルム2世がルフィジ川沿いの一帯の約2,500平方kmのエリアを妻アウグステ・ヴィクトリアのために独占的な狩猟場として贈ったのが始まりです。当時は、現地の言葉で妻の土地という意味の「サンバ・ヤ・ビビ」と呼ばれていましたが、第1次世界大戦後、ドイツ領東アフリカがイギリス領となった後に、周辺の4つの保護区が統合されて「セルース猟獣保護区」が設立されました。セールスとは、1917年にドイツ軍との戦いでこの地で戦死したイギリス人の偉大な探検家でハンターだったフレデリック・セルースに因んで名付けられました。その後も保護区の面積は拡大され、現在の規模まで広がりました。
ルフィジ川を中心に湖沼や湿地、草原、森林などの変化に富んだ手付かずの大自然が広がるセルース猟獣保護区には、哺乳動物や野鳥、昆虫、爬虫類、魚類など多くの生物が生息する豊かな生態系が育まれています。セルース猟獣保護区と隣接する西部のキロンベロ保護区やミクミ国立公園とは、巨大な一つの生態系を形成しており、動物たちはその広大なエリアを自由に行き来しています。
セルース猟獣保護区は、大まかにルフィジ川の北部と南部に分かれています。一般の旅行者が訪れるのは、サファリ観光専用のエリアとなっている北部で、このエリアでの狩猟は完全に禁止されています。因みに北部の観光エリアは、保護区の総面積のわずか5%ほどにすぎません。南部は様々な狩猟ブロックに分かれています。ただし、狩猟には許可が必要となります。
セルース猟獣保護区へは、陸路でも訪れることはできますが、宿泊施設が集まるルフィジ川周辺は、道路状況が悪いので、ダルエスサラームなどから直接小型飛行機で訪れるのが一般的です。
セルース猟獣保護区は、数万から10万頭以上の個体数が確認されている多様な野生動物の楽園です。10万頭以上のバッファローやヌー、インパラ、約35,000頭のシマウマ、約40,000頭のカバ、約4,000頭のライオンをはじめ、アフリカゾウ、リヒテンシュタイン・ハーテビースト、ウォーターバック、エランド、ヒョウ、ワニ、ハイエナ、ブッシュバック、イボイノシシ、バブーンなど様々な野生動物が生息しています。さらにクロサイやリカオンといった絶滅危惧種の動物やセーブルアンテロープ、クードゥー、プークーなどアンテロープの希少種の重要な生息地にもなっています。また、セルース猟獣保護区は、野鳥の楽園でもあり、保護区内では440種類以上もの鳥類が観測されています。しかし、近年、密猟によりゾウやサイをはじめとした野生動物の個体数が激減しており、2014年からはユネスコの危機遺産に指定され、生態系の保護が重要な課題となっています。
セルース猟獣保護区での観光と言えば、もちろんゲームドライブ。国立公園でのゲームドライブは、決められた道路しか走行できないのが一般的ですが、セルース猟獣保護区ではオフロードの走行も可能で、より動物に接近できるチャンスがあり、動物が逃げさえしなければ、至近距離で観察したり撮影をすることができるのも大きなメリットです。
ルフィジ川周辺の木々が茂る草原には、ヌーやインパラなどの草食動物が群れをなし、それらを狙うライオンやチーター、ヒョウなどの捕食動物も多く生息しています。ミオンボ森林(疎開林)では、キリンがアカシアの木を葉を食べている姿がよく見られます。
ゲームドライブは、野生動物の動きが活発となる早朝と夕方が人気で、運がよければ、ライオンなどの肉食動物が狩りをする姿が見られることも。日中のゲームドライブでは、大自然の中でピクニックランチを楽しむことができます。サファリは野生動物が相手なので、見たい動物を必ず見られるとは限りませんが、サファリガイドは、遠くからでも動物を見つける能力に長けているので、見たい動物を予め伝えておくとよいでしょう。
セルース猟獣保護区では、ゲームドライブの他にもボートサファリやウォーキングサファリ、バルーンサファリ、バードウォッチングなどのアクティビティを楽しめます。ボートサファリは、ルフィジ川や周辺の水路をボートで進みながら、水に浸かるカバの群れやワニ、野鳥など水辺に生息する様々な野生生物の観察ができ、セルース猟獣保護区の観光のハイライトの一つでもあります。川辺の崖エリアに営巣する様々な種類のハチクイやカワセミをはじめ、魚を捕らえるサンショクウミワシ、ペリカンなど陸地からはなかなかその姿がとらえられない野鳥の観察も楽しめます。
ゲームドライブでは見逃してしまいがちな自然をより身近に感じることができるのが、ウォーキングサファリ。レンジャーとともに昆虫や小動物、植物、動物の足跡などを観察しながら自然の中を歩き、野生生物の習性や植物に関する知識を学ぶことができます。
セルース猟獣保護区は、一年を通して観光できますが、サファリを楽しむなら動物の動きが活発となる乾季の6月~10月がオススメです。3月~5月の大雨季は、道路状況が悪くなり行動範囲が限られることがあり、ほとんどのロッジが閉鎖されるので注意が必要です。
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【ジュリウス・ニエレレ国際空港からセルース猟獣保護区】
小型飛行機で1時間前後
※車で行く場合は、ダルエスサラームから6~8時間