スティーブンス・クリントは、シェラン島南東部の海岸に約15kmに渡って広がる白亜質の切り立った断崖です。その独特の景観は、訪れる人々を魅了しています。ここは、約6500万年前に隕石が地球に衝突した時の影響を示す地層や化石が顕著に見られる場所で、地球科学の研究や発展に大きく貢献しました。この地質学的価値が認められ、2014年に世界遺産に登録されました。さらに渡り鳥や希少生物の生息地としての重要性や地層を生かした軍事要塞が築かれた文化的価値も合わせ持っています。
約6500万年前の白亜紀末にメキシコのユカタン半島に隕石が衝突した時に巨大なチクシュルーブ・クレーターが形成されました。この隕石の衝突により世界中に灰が降るとともに、気候変動が起こり、地球上の生物の50%以上が絶滅しました。そして恐竜時代が終わったのは、この隕石の衝突が引き金になったと考えられています。
世界遺産に登録されているスティーブンス・クリントは、隕石の衝突の影響による中生代の白亜紀末期から新生代の古第三紀の境目(K-Pg境界)を顕著に示しており、その当時の地層や生物化石を見ることができます。チクシュルーブ・クレーターは海中にあるのに対して、スティーブンス・クリントは陸上にあり観察が容易なことから地球科学の研究や発展に大きく貢献してきました。
スティーブンス・クリントは、広範囲に広がっており、自然景観だけでなく、歴史や文化的な見どころもあります。訪れるスポットにより異なりますが、コペンハーゲンから電車とバスを乗り継いで約2時間、車だと1時間ほどでアクセスできます。場所によっては、公共交通が通っていないので、複数箇所を巡るならレンタカーの利用が便利です。
高さ40m以上、全長15kmにも渡るスティーブンス・クリントは、北のBøgeskovから南のRødvigまで海岸に沿って遊歩道が敷かれており、ユニークな地層や希少な動植物相、雄大な海岸景観を眺めながらハイキングを楽しむことができます。春や秋には、渡り鳥の群れを見ることができるスポットが点在し、バードウォッチング愛好家にとっても人気があります。北端Bøgeskovは、小さな波止場があります。波止場の北側には、小さいながら砂浜のビーチがあり、夏は海水浴を楽しむ人々で賑わいます。
Bøgeskovから海岸線を3kmほど南下すると、かつての石灰岩の採石場跡があります。現在は自然保護区に指定されており、クシイモリやアオガエルなど生息している他、海洋生物の化石も発見されています。
壮大な景観が魅力のスティーブンス・クリントですが、自然保護と安全上の理由から崖をよじ登ったり、岩盤の採掘は禁止されています。また、崖は崩れやすく、波が高い時は危険なので、崖付近を歩く際は、十分に注意が必要です。
スティーブンス・クリントの中でも印象的な景観が見られるオススメのスポットがHøjerup。Højerupには、断崖すれすれの場所に13世紀後半に建てられた石造りの古い教会が残っています。この教会は、安全上の理由から1910年にすでに閉鎖されており、150mほど内陸に新しい教会が建設されました。伝説では、この古い教会は毎年クリスマスの夜に崖から落ちないように少しずつ内陸に移動すると伝えられていましたが、1928年に崖崩れが起き、古い教会の内陣と墓地の一部が海に崩落してしました。現在、古い教会の残りの部分は修復、保護されており、内部を見学することができます。教会のバルコニーからは、紺碧に輝くバルト海の素晴らしい眺めを楽しめます。また、毎年8月の第2火曜日には、この教会で音楽コンサートが開かれています。
教会の南側の階段を下りていくと海岸に出ることができ、石灰質の地層を間近で見ることができます。階段の下は、崩落した岩がゴロゴロと転がっているので、海岸を見学する際は足元にはご注意下さい。海岸に下りて岩壁を見てみると、黒い筋のような層をはっきりと確認することができます。これが中生代と新生代の境を示すK-Pg境界と呼ばれるもの。この黒色の地層は、艶のあるガラス質の岩石で、隕石の衝突の際に形成されたと考えられており、その他の部分の地層と比べると、明らかに異なることがわかります。
教会から海岸沿いの遊歩道を北に1.5kmほど歩いて行くとスティーブンス灯台があります。この灯台は、スティーブンス・クリントの中で最も高い場所です。ここは、冷戦時代にコペンハーゲンの航空防衛拠点の一つだった場所で、灯台周辺には、当時の遺跡が残っています。Højerupからも比較的近いので、散策がてら訪れてみるとよいでしょう。
Højerupからさらに南に3kmほど行くと、冷戦時代に秘密基地として造られた地下要塞があります。この要塞は、1953年に建設され、2000年まで実際に稼働していました。地下要塞には、司令室や居住スペース、医務室、礼拝堂などが備えられ、全長1.7kmのトンネル通路で結ばれています。スティーブンスの地層は、核兵器に対して高い衝撃性があると言われています。地下トンネルは、岩肌がむき出しとなっており、ここでもK-Pg境界の地層を見ることができます。現在はスティーブンス要塞冷戦博物館として一般公開されていて、地下の要塞施設の他、屋外の敷地内や戦争に関する展示を見ることができます。敷地内は公園のように整備されており、ミサイルや戦車、戦闘機などが至るところに展示されています。地下要塞は、ガイドツアーでのみ見学が可能です。スティーブンス要塞冷戦博物館は、4月~10月は毎日営業していますが、営業時間は時期により異なるので、訪れる際は事前にホームページで確認しておくことをオススメします。また、地下トンネルは1年を通して10℃と気温が低いので、夏に訪れる場合も上着などの羽織ものを用意しておいた方がよいでしょう。
博物館の東側にはスティーブンス・クリントの海岸線が続いており、美しい海岸風景を見渡すことができます。
ツアー・アクティビティ名 | 所要時間 | 詳細 |
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コペンハーゲンは、四季がはっきりとしていて、観光のベストシーズンは、最も過ごしやすい夏の6月~8月です。緯度が高いため夏季は日照時間が長く、観光に十分時間を取ることができます。沿岸を流れる暖流の影響で高緯度の割には温暖ですが、冬は日照時間が短くなり、厳しい寒さとなるので防寒対策は万全に。
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【コペンハーゲン空港から市内】
<電車(DSB)>
所要時間:(コペンハーゲン中央駅)約15分
料金:36DKK
参考サイト:dsb.dk
<地下鉄>
M2が空港から市内まで運行
所要時間:約15分
料金:36DKK
参考サイト:m.dk
<バス>
5Aが空港からコペンハーゲン市内中心部まで運行
所要時間:約30分
料金:36DKK
<タクシー>
メーター制
所要時間:(市内中心部)20~30分
目安料金:250~300DKK
【コペンハーゲン市内からのアクセス】
コペンハーゲン中央駅から近郊列車(S-tog)A線に乗車→(約45分)→Køge駅下車→ローカル線210Rに乗り換え→(約25分)→St. Heddinge駅下車→252番バスに乗車→(約10分)→Højerup下車→海岸まで徒歩約10分
(2018年11月現在)