チュニスから南西に約250km、チュニジア中西部に位置する小さな町スベイトラ。町のはずれには古代ローマからビザンチン時代にかけて存在したスフェチュラの都市遺跡が残っており、チュニジアのビザンチン時代の終焉の地として知られています。現在残る遺跡は、ローマ帝国時代の最盛期、2~4世紀に建設されたものがほとんどです。中でもローマの三神ユーピテル、ユーノー、ミネルヴァに捧げられた神殿跡はこの遺跡のハイライトとなっています。
営業時間:(6/1-9/15)8:00-19:00(9/16-5/31)8:00-17:30 ※ラマダン期間中は短縮営業
料金:8TND
参考サイト:patrimoinedetunisie.com.tn
この地は古くはベルベル人が暮らす場所でしたが、現在遺跡として残るスフェチュラの町が築かれたのはローマ時代の1世紀頃に遡ります。スフェチュラは、セプティミウス・セウェルス帝(2世紀末~3世紀初頭)とディオクレティアヌス帝(3世紀末~4世紀初頭)の時代に最も繁栄し、フォルム(公共広場)や神殿、門、劇場、テルマエ(公衆浴場)など現在残る遺跡のほとんどはその最盛期に建設されました。この地は、オリーブオイルの生産で繁栄し、遺跡からはオリーブの圧搾工房も見つかっています。その後、5世紀にはヴァンダル帝国、6世紀にはビザンチン帝国へと支配者が入れ替わりましたが、7世紀中頃にアラブ人の襲撃により、スフェチュラの町は徹底的に破壊され、以後この地はイスラム勢力の北アフリカ征服の拠点となりました。
スフェチュラ遺跡は、チュニジアの中でもローマ時代の保存状態の良い都市遺跡であり、遺跡からはかつてのこの地の繁栄ぶりが偲ばれます。
スフェチュラ遺跡のシンボルでありハイライトとなっているのが、最盛期の2世紀に町の中心部に建設された3つの神殿です。この神殿群を取り囲む壁は、6世紀のビザンチン帝国時代に軍事要塞として使用された際に建設されました。これらの神殿群の入口となるのが、139年に建設された3つのアーチがある壮大なアントニヌス・ピウスの門で、門をくぐると柱廊に挟まれたフォルム(公共広場)があり、その奥に3つの神殿が並んでいます。これら3つの神殿は、ローマの三神ユーノー、ユーピテル、ミネルヴァに捧げられたもので、中央がユーピテル(ゼウス)、両側にそれぞれ妻ユーノー(ヘラ)と娘ミネルヴァ(アテネ)の神殿が配置されています。このように3つの神殿が並んで配置されているのは、他のローマ遺跡では見られない珍しい特徴です。さらに、中央のユーピテル神殿には、他の2つの神殿と異なり正面に階段が設けられておらず、左右にあるユーノー神殿とミネルヴァ神殿から架けられている橋を渡らなければアクセスできないという非常にユニークな構造となっています。
スフェチュラは、ローマ時代からヴァンダル帝国、ビザンチン帝国時代まで主教座が置かれ、北アフリカにおけるキリスト教の中心地としても栄えました。
遺跡内からは6つ以上の教会遺跡が見つかっており、それらはドナトゥス派やアリウス派、カトリック、正教会などキリスト教内でも異なる宗派の教会が混在し、それぞれの教会建築は支配者の宗派が変わる毎に引き継がれることなく、各宗派が独自の礼拝所を築き、崇拝していたことを示唆しています。
残念ながら教会の建物自体はほとんど原型を留めておらず、柱や基礎部分などの遺構の一部が残るのみとなっています。その中でも見どころとなっているのが、3つの神殿の北側にある5世紀~6世紀に建てられたアリウス派のものとされるヴィタリス大聖堂。この聖堂からは、カラフルなモザイク装飾が施された見事な洗礼槽が2つ発見されています。一つは洗礼槽の底が魚をモチーフにしたモザイクで飾られており、もう一つは植物模様のモザイクが施され、階段や座席が設けられた 複雑な構造の洗礼槽です。
アントニヌス・ピウスの門から東に伸びる通りをまっすぐ進むと広々としたテルマエ(公衆浴場)の遺跡があります。このテルマエには、カルダリウム(高温浴室)やテピダリウム(微温浴室)、フリギダリウム(冷水プール)、パライストラ(レスリング場)、更衣室など一般的なローマの公衆浴場にある設備はひと通り備わっていました。現在は、大部分が崩れてしまっており、ほとんど原型を留めていませんが、カルダリウムの複雑な床暖房システムの構造は今でも残っており、崩れた床の隙間から見ることができます。また、床面には幾何学模様が描かれたモザイクも残っており、特に列柱に囲まれた中庭のあるパライストラには状態のよいモザイクがあります。
テルマエの東側には、3世紀に建設された半円型のローマ劇場があります。この劇場は、きれいに修復されており、現在も使用可能な状況となっています。
スフェチュラ遺跡には、大型の主要な公共建造物以外にも噴水や貯水池などの遺跡も残っており、住宅エリアからは部屋を飾っていたモザイクも多く発見されています。遺跡の北西の端には、円形闘技場の遺跡がありますが、発掘調査があまり進んでおらず、ところどころに遺構が見られるものの荒地のように見え、円形闘技場と認識するのは難しいかもしれません。
スフェチュラ遺跡の中心部から少し離れた南東の角には、ディオクレティアヌス帝の治世下で建てられた町の入口となる凱旋門(ディオクレティアヌス門)があります。また、遺跡の入口近くには、スベイトラ博物館があり、館内は彫像やモザイク、陶器、碑文などスフェチュラ遺跡からの発掘品が展示されているので、遺跡見学と合わせて立ち寄るとよいでしょう。
スフェチュラ遺跡は、ユニークで興味深い遺跡ですが、遺跡内には建物の名前を表示した最小限の標識以外の解説はほとんど書かれていないので、遺跡を見ただけではよくわからないことも。じっくり楽しむならツアーなどを利用してガイド同伴で行くのがオススメです。
内陸に位置するスベイトラは、夏は乾燥して暑く、冬は比較的温暖な気候です。観光は1年を通して楽しめますが、町歩きは春から初夏にかけての4月~6月がオススメです。真夏は日差しが強く、日射病に注意が必要です。日向を歩く場合はこまめな水分補給や休憩とサングラスや帽子、日焼け止めは必須です。昼夜の寒暖差が激しく、夜間は冷え込むので、温度調節しやすい服装がおすすめ。
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【チュニス・カルタゴ国際空港からチュニス市内】
<タクシー>
所要時間:(市内中心部)10~20分
目安料金:5TND前後
<路線バス>
大通り沿いのバス停から35番又は635番に乗車。終点チュニス・マリン駅まで運行
所要時間:20~30分
料金:0.500TND
【チュニスからスベイトラ】
<バスもしくはルアージュ>
南バスステーションからスベイトラ行きのバスに乗車
所要時間:約4.5時間
参考サイト(バス):sntri.com.tn