トズールから北西に約60km、アルジェリア国境付近に位置するタメルザ渓谷は、自然が生み出したダイナミックな景観が広がっており、1996年の映画「イングリッシュ・ペイシェント」のロケ地に使用されたことで一躍注目を集めました。渓谷内には、洪水により廃墟となった集落跡が残るシェビカ、印象的な滝があるタメルザ、断崖絶壁の深い渓谷の上にあるミデスという3つの山岳オアシスがあります。ハイキングや散策を楽しめ、トズールからの日帰り観光スポットとして人気があります。
アルジェリアとの国境ほど近くに位置するタメルザ渓谷は、地層が剥き出しとなった山々が続く、美しくも険しいダイナミックな景観が広がっています。トズールから北上して行くと、やがて荒凉とした山の谷間にヤシの木々が生い茂る山岳オアシスの村シェビカ(Chebika)が見えてきます。荒々しい山々の景色を背景に緑豊かな木々が生い茂るオアシスとのコントラスは、絵に描いたような美しさ。シェビカは、1969年に起きた大洪水により集落全体が水没し、廃墟となってしまいました。現在、村の人々は近くに新たな集落を建て直し暮らしています。オアシスの水が流れる小川沿いには、日干しレンガできた建物が残るかつてのシェビカの集落遺跡がひっそりと残っています。小川に沿って渓谷の奥に歩いて行くと岩肌から清らかな湧き水が流れ落ちる小さな滝や池が見られます。小川沿いには遊歩道が整備されているので歩きやすく、観光客の散策コースとして親しまれています。一方、山の上の方に登って行くと、岩の上には、渓谷を見下ろすようにヤギのモニュメントが置かれています。このモニュメント周辺からは眼下に廃墟となった集落遺跡やその先に作られた新しい集落、さらに地平線まで続く砂漠の壮大な景色を眺めることができます。途中までは、階段が整備されていますが、岩がゴロゴロとした滑りやすい場所もあるので、頂上付近まで登る場合は、足元にはくれぐれもご注意下さい。
シェビカからタメルザに向かって北上すると、途中には、ダイナミックな渓谷のパノラマを望めるビュースポットがあるので、ぜひ立ち寄ってみて下さい。地層が剥き出しになった岩山もよく見ると場所によって色が異なり、太陽の光を受けてグラデーションを描く山並みは荒々しくも美しさが感じられます。このビュースポットから少し行くとタメルザの見どころとなっているグランド・カスカド(大滝)のある公園に到着します。立派な滝を想像して行くと、拍子抜けするくらい小さな滝ですが、砂漠地帯に暮らす人々にとっては貴重な水源。むしろ、この乾いた大地のどこから清流が湧き出ているのか不思議に思えるほど。水量が多い時には、滝壺が天然のプールとなり、水浴びを楽しむ人々の姿も見られます。因みにタメルザ渓谷の源流はアルジェリアにあり、チュニジアではそれほど雨が降っていなくてもアルジェリアで大雨が降るとその影響でこの渓谷の水量も増します。
長い歳月をかけて侵食されて作り出されたタメルザ渓谷の独特の形状の岩壁も印象的。そんなダイナミックな景観が広がる渓谷内を歩いていると、だんだんと遠近感がつかめなくなり、どこか違う惑星にでも迷い込んだような不思議な気分になります。また、グランド・カスカド周辺には、土産物屋のカラフルなストール並んでおり、モノトーンな空間に彩を添え、フォトジェニックな景観を作り上げています。
タメルザは、チュニジア最大の山岳オアシス。渓谷沿いには、ヤシの木が生い茂る広大なオアシスが広がり、オアシスの北側に町が広がっています。タメルザは穏やかな空気が流れる雰囲気のよい町で、シェルビやミデスに比べるとレストランやカフェ、ホテルなど観光客向けの施設も充実しています。また、オアシスの中には、のんびり寛げるカフェやレストランがあるので休憩に立ち寄るのもオススメです。
タメルザの町の外れにあるタメルザの旧集落もシェビカと同様に1969年の大洪水により水没した後、放棄され廃墟となってしまいました。廃墟となった集落遺跡は、現在も残っており、歩いて見学することができます。廃墟となり崩れかけた集落遺跡の中はひっそりとしています。集落遺跡の中央にあるモスクと遺跡の端の方にある先が尖ったドームの礼拝堂は、現在も地元の人々に神聖な場所とみなされており、建物が白く塗られています。
タメルザのさらに6kmほど北側には、山岳オアシスの小さな村ミデス(Mides)があります。ミデスは、アルジェリア国境までわずか1kmほどの場所に位置し、オアシスの先にアルジェリアの山々が見えています。ミデスもシェビカやタメルザと同様に1969年の大洪水で旧集落は廃墟となり、現在はワジ(涸れ川)を挟んだ向かい側に新たな集落が築かれています。ミデスの旧集落は、断崖の上に築かれており、断崖の下には深い渓谷が広がっています。ビュースポットからは、岩山の上にひっそりと残る旧集落の遺跡を眺めることができます。
断崖の淵の近くまで行って渓谷の下を覗いてみるとかなりの高さがあることが実感できますが、崖が崩れてしまいそうで思わず足がすくみそうになってしまいます。川の水の流れによって削られた渓谷の蛇行した壁面は、非常に美しく、地球の壮大な歴史が感じられます。ミデスは、シェビカやタメルザに比べると訪れる観光客も少なくひっそりとした印象ですが、渓谷の美しさはとっても印象的で、一見の価値があります。
タメルザ渓谷は、公共交通機関が発達しておらず、これらのスポットを巡る場合は、ツアーを利用するのが一般的。個人旅行の場合は、トズールから日帰りのツアーを利用するのが便利です。
砂漠地帯に位置するトズールは、一年を通して乾燥した気候で、昼夜の寒暖差があるので温度調節しやすい服装が必要です。観光のベストシーズンは、最も過ごしやすい3月~5月と10月~11月です。夏は酷暑となり、こまめな水分補給や休憩とサングラスや帽子、日焼け止めは必須です。冬は、日中は比較的温暖ですが夜間は0度近くまで冷え込むこともあるので防寒着をお忘れなく。
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【トズール・ネフタ国際空港からトズール市内】
<タクシー>
所要時間:(市内中心部)5~10分
※チュニスからバスで行く場合
南バスステーションからトズール行きに乗車
所要時間:約7時間
参考サイト(バス):sntri.com.tn
【トズールからタメルザ渓谷】
車で約1時間