シェラン島北部のパル・フォルス式狩猟の景観は、コペンハーゲン北部のストア・ディアヘーヴェ、グリブスコウ、イェーヤスボー樹林とディアへーヴェの3つの狩猟森林地帯です。これら3つの狩猟森林地帯は、かつてのデンマーク王室のために作られたパル・フォルス式の狩猟場があります。これらの狩猟森林地帯は、17世紀後半~18世紀初頭にヨーロッパで流行したバロック様式の景観デザインで設計されており、当時の文化的交流や思想を反映した狩猟場の重要な発展段階を伝えるものとして2015年にユネスコの世界遺産に登録されました。
参考サイト:parforce.dk/
シェラン島北部の狩猟地帯の歴史は、中世にまで遡ります。当時は、王室や貴族、教会が森林や農地に領土や狩猟場を有していましたが、16世紀の宗教改革の後、カトリック教会に属していた土地は王室が支配するようになり王室専用の狩猟場が作られました。シェラン島北部の森林地帯にパル・フォルス式狩猟地が設計されたのは、クリスチャン5世の時代の1670年以降のこと。パル・フォルス式狩猟とは、フランスで始まった騎乗して猟犬を伴う狩猟のことで、ヨーロッパの絶対王政下で流行したスタイルです。クリスチャン5世は、若い時にフランスでパル・フォルス式狩猟を体験しており、その華やかな狩猟スタイルに魅了され、デンマーク王室にもパル・フォルス式狩猟を取り入れたのです。
パル・フォルス式狩猟では、王や招待客は、ハンターと猟犬が雄鹿などの獲物を追い込むまで森の中心部で待っていました。ハンターや猟犬が猛スピードで獲物を追いかける姿は、彼らが控えている中心部から眺めることができたと言われています。獲物が体力を失い弱ったところで、猟犬が獲物に噛みつきます。そして、最後に王が狩猟用の槍や剣で獲物に止めを刺すのです。これは、自然を支配する偉大な戦士王として、当時の絶対王政における君主の権力を示す目的もあったのです。
シェラン島北部に残るストア・ディアヘーヴェ(Store Dyrehave)、グリブスコウ(Gribskov)、イェーヤスボー樹林とディアへーヴェ(Jægersborg Hegn/Dyrehaveæ)の3つの狩猟森林地帯が、2015年にユネスコの世界遺産に登録されました。これらの狩猟森林地帯は17世紀~18世紀にかけて設計されたもので、森林の中に敷かれた幾何学的な道路網、番号が振られた石標や石柱、柵、狩猟小屋など当時ヨーロッパで流行したバロック様式の造園技術が狩猟場に取り入れられているのが大きな特徴です。
パル・フォルス式狩猟で重要なのが、景観を横切る道路を発展させること。シェラン島北部のパル・フォルス式の狩猟森林地帯では、フランスやドイツで用いられていた星型道路網をもとに狩猟にその機能を最適化し、独自の幾何学的道路網に改良されたデザインとなりました。石の標柱は、どの星の中心に向かっているか、もしくはどの星の中心から伸びているかを示しています。現在もこのパル・フォルス式狩猟の景観がよく保存されたシェラン島北部の森林地帯は、自然形成におけるバロックの価値観がヨーロッパの景観デザインの発展に寄与した好例として高く評価されています。
世界遺産の登録エリアは、かなり広大なので、全てを見て回るのは難しいですが、観光で訪れるならイェーヤスボーがコペンハーゲンからアクセスしやすくオススメです。
イェーヤスボーの樹林とディアへーヴェは、コペンハーゲンから北に約10kmと比較的近い場所に位置しています。イェーヤスボーは狩猟の城という意味を持ち、イェーヤスボーには、狩猟小屋として使用されていたバロック様式の美しい館が残っています。この館の周辺は、広大な草原と森林地帯が広がる見通しのよい場所に位置しており、ここを中心に放射状に道が敷かれています。この館の内部は夏季に行われるガイドツアーでのみ見学が可能となっています。周辺は、ピクニックスポットとしても親しまれています。
ディアへーヴェとは鹿公園を意味し、イェーヤスボーの鹿公園では、園内を歩いているだけで多くの鹿に出会うことができます。中には立派な角を持った鹿も見られます。運が良ければ鹿の大群を目にすることもできます。草を食んだり、駆け回ったりと伸び伸びと暮らす鹿たちの姿は見ていて飽きません。
イェーヤスボーへのアクセスは、コペンハーゲンから近郊列車でクランペンボー(Klampenborg)駅まで約20分。駅から5分ほど歩くと鹿公園の入口があります。バロック様式の館へは、鹿公園をそのまま北上し、徒歩で30分ほど。距離はありますが、途中道から逸れなければ、迷うこともありません。この辺りは、平坦な道が続くので、サイクリングやジョギングをする人々の姿も見られます。イェーヤスボーでは、この他、馬車や乗馬体験をすることもできます。
また、鹿公園の入口付近には、世界最古の遊園地バッケン(Bakken)があります。森の中にレトロな乗り物やゲームコーナー、カフェなどがあり、入場料も無料(アトラクションの利用のみ有料)で気軽に立ち寄れるので、合わせて訪れて見てはいかがでしょうか。
ストア・ディアヘーヴェやグリブスコウは、コペンハーゲンから北に約30km、フレデリクスボー城のある町ヒレレズの近郊に位置しています。ストア・ディアヘーヴェ(大きな鹿公園)には、現在も鹿がたくさん生息しており、多くの鹿たちに出会うことができます。かつてのデンマーク王室の狩猟文化を色濃く残し、美しい自然も堪能できるエリアです。ストア・ディアヘーヴェは、長方形の森の中心部分から放射状に道路が伸び、さらに森のどの部分にもアクセスできるように碁盤の目のように道が繋がっており、上から見た時に幾何学的な道路網が敷かれています。現在も自然豊かな森林地帯は健在で、森林浴をしながらハイキングやサイクリングを楽しむ人々の姿もよく見られます。公共交通の便はあまり良くありませんが、自然を満喫するにはオススメのエリアです。
ツアー・アクティビティ名 | 所要時間 | 詳細 |
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選べるバス&ボートが乗り降り自由!ホップオン・ホップオフ 市内観光ツアー<48時間有効/コペンハーゲン発> | - | |
フレデリクスボー城とバロック式庭園 半日観光ツアー<貸切/午前/コペンハーゲン発> | 4時間 | |
世界遺産クロンボー城とフレデリクスボー城入場 1日観光ツアー<5月~9月/コペンハーゲン発> | 1日 |
コペンハーゲンは、四季がはっきりとしていて、観光のベストシーズンは、最も過ごしやすい夏の6月~8月です。緯度が高いため夏季は日照時間が長く、観光に十分時間を取ることができます。沿岸を流れる暖流の影響で高緯度の割には温暖ですが、冬は日照時間が短くなり、厳しい寒さとなるので防寒対策は万全に。
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【コペンハーゲン空港から市内】
<電車(DSB)>
所要時間:(コペンハーゲン中央駅)約15分
料金:36DKK
参考サイト:dsb.dk
<地下鉄>
M2が空港から市内まで運行
所要時間:約15分
料金:36DKK
参考サイト:m.dk
<バス>
5Aが空港からコペンハーゲン市内中心部まで運行
所要時間:約30分
料金:36DKK
<タクシー>
メーター制
所要時間:(市内中心部)20~30分
目安料金:250~300DKK
【コペンハーゲン市内からイェーヤスボー】
コペンハーゲン中央駅から近郊列車(エストー)C線に乗車→(約20分)→Klampenborg下車→鹿公園入口まで徒歩5分
(2018年11月現在)